あっちこっちおかねや

「食」から広がるご縁で、日本各地世界各国を楽しく放浪している人です

石川能登、輪島塗と発酵食品の旅

ゴールデンウィークに石川を訪れて素敵な方々に出会い繋がったのがきっかけで、また会いたくて7月最後の週末に行った。

 

今回最初の訪問先は、日本一小さな農家「風来」の西田さん。農家と言いながら、webサイトの作成や管理もするし、お菓子や漬物のネット販売もするし、ワークショップや体験会もたくさんするし、本当に多彩ななんでもやる屋さん。前回来た時に、「自分は農家じゃなくて百姓。一つのことだけやって生きているんじゃなくて100くらいある方が安定」とおっしゃっていたのがとても記憶に残っている。

今回も、畑のことをひとしきり話した後は、webサイトの運用や商品の売り方の困りごとの話。一応webの仕事をしているので、ちょっとだけでも役に立つことがあったらいいなと思いながら僭越ながら色々口を出してみる私。
西田さんは、長年試行錯誤してきて一通りのことは考えただろうに、未熟な意見にも謙虚に耳を傾けてくれる。食べ物を作ることや届けることにこれだけ心を注いでいる人がいるって、本当に頭が下がる。


東京に住む自分は、自分の食べるものを作ることができない。だからこそ、自分が安心して食べ続けたいと思うものを作ってくれる方に心から感謝する。そして、ちょっとだけかもしれないけれど、こうやって相談に乗ったりすることで自分が「作る」過程に携われているのがうれしい。

 

西田さんに言われてはっとしたのは、「買ってくれる人がいるから安心して作れる」ということ。
「生産者と消費者」ではなく、作ってくれてありがとう・買ってくれてありがとう、という感謝と敬意でつながる関係でお互い繋がれたら、食べることってとっても豊かだなと思う。

 

直前に連絡したにも関わらず、美味しい手料理をもって駆けつけてくれてくれた燻製おじさん塩谷さん、ありがとう :D

 

塩谷さんのご飯をみんなでいただいた後は、ヤマト醤油味噌の山本耕平さんに会いに糀パークに。まずは、夏休み始まったばかりの子どもたちに混じって工場見学。建物に入った瞬間、樽に染み込んだ味噌の香りに思わず顔がほころぶ。でも、こうやって樽で発酵熟成させて作られているのは市販の味噌の数%しかないのだそう。

見学の後は、玄米甘酒をいただきながらゆっくり話す大人たちの時間。
伺った話の中で一番印象的だったのは、「醤油や味噌を売る会社ではなく、発酵食品文化を通してお客様の健康を作る会社になりたい」という山本さんの言葉。そういう明確な世界観を持っているから、一つひとつの商品の説明にも熱がこもっている。だから喜んで買いたくなる。買わせてくれてありがとうございますの気持ちでいしるだしを購入した (今これ我が家で大活躍している)。醤油ソフトもおいしかった。山本さんありがとうございました。

 

そして能登島に移動して、向田の火祭り。今回能登に訪れたのはこの火祭が本当の目的だったのだけれど、長くなるので、地元の方とわいわい宴をして猛々しい祭りを見て一夜の出会いを楽しんだことだけを書いておく。

 

大変味のある能登島の民宿千寿荘で一泊した後、宿のおばちゃんに別れを告げ、翌朝は輪島へ。前回能登に来た御縁から先月東京で輪島塗とお味噌汁の会を開催したのけれど、その時に器一式を送ってくださったのが輪島キリモトさん。お礼とご挨拶がしたくて、前日に思い立って連絡し、木工所を訪問させてもらった。

直前だったにも関わらず、朝から木工所を案内してくださって一つ一つの工程や輪島塗への思いを丁寧に教えてくださった。

「誰かの生活を少しでもよくしたい」という奥様の言葉が、前日の山本さんの言葉と重なり、食に関わる仕事をする者として背筋が伸びる思い。
箸の楕円加減、スプーンの曲がり具合、椀の縁の丸み、厚さ、艶…すべての小さなこだわりが「生活をよくしたい」という思いから生まれていて、だから手にするとすごく気持ちいい。


輪島塗は自分が買うには高いし勿体無い...と思っていたけれど、そういった一つ一つのこだわりが積み重なって値段になっていると考えたら、高いからこそ買いたいという気持ちになった。

小一時間悩んだ挙句、手に吸い付いて離れなかった輪島塗を買わせていただいた。食卓にまた一つ幸せが増えた ^^

 

その後は輪島の朝市に。

能登の珍味、先人の知恵の結晶とも言える発酵食品や保存食品、一つ一つ話を聞いていたらその奥深さが楽しくなって、気づいたらたくさん買っていた。

今回の旅は、様々な出会いから、器や食材や調味料をたくさん買って帰った。お菓子のお土産もいいけれど、食べたらなくなってしまうものを買うよりも、自分で使って楽しめて明日からの生活をちょっとだけよくすることができることができるこういうものを持ち帰れるのが、私は好き。

 

西田さんの鯖の糠漬け、山本さんのいしるだし、キリモトさんのお椀、朝一で買ったもずくや海藻類や各種珍味...我が家の食卓に取り込まれて、生活の幸せを作ってくれています。